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2026/05/12

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ナフサショックと住宅業界の変化

― 価格高騰の時代に、ものづくり企業が考えるべきこと ―

最近、住宅業界の方々とお話しする中で、非常によく耳にする言葉があります。
それが「ナフサショック」です。

ニュースなどでは聞いたことがある方も多いかもしれませんが、実際には「住宅とどう関係があるの?」と思われる方も少なくありません。

しかし今、このナフサ価格の高騰が、住宅業界全体に大きな影響を与えています。

そしてその影響は、単に「材料費が上がった」というレベルではなく、住宅会社の経営、家づくりの考え方、お客様の購入判断、さらには地域のものづくり企業の在り方にまで広がっています。

今回は、福田鉄工として日々感じていることも交えながら、「ナフサショック」と住宅業界の現状について少し書いてみたいと思います。

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そもそもナフサとは何か

ナフサとは、簡単に言えば石油を精製する過程で生まれる原料の一つです。
このナフサは、私たちの生活のあらゆる場面で使われています。

例えば、

  • プラスチック
  • 樹脂製品
  • 塗料
  • 接着剤
  • 発泡系断熱材
  • ビニール製品
  • 配管材料
  • 防水材
  • 包装資材

など、数え始めればきりがありません。

住宅業界で考えてみても、家一軒の中にはナフサ由来の材料が非常に多く使われています。

つまり、ナフサ価格が上がるということは、住宅に関わるほぼすべての材料価格が上昇する可能性がある、
ということです。

実際にここ数年、住宅業界では、

「また材料が上がった」
「来月から値上げらしい」
「見積もりを出した時点と価格が違う」

そんな会話が当たり前のように聞こえてきます。

住宅価格は“じわじわ”ではなく“急激”に変わった

以前であれば、住宅価格の変動は比較的緩やかなものでした。

もちろん多少の資材価格変動はありましたが、企業努力や仕入れ調整で吸収できる範囲も多かったと思います。しかし近年は違います。

コロナ禍以降、世界的な物流停滞やエネルギー価格高騰、円安などが重なり、資材価格が急激に上昇しました。

特に住宅業界では、

  • 木材価格の高騰
  • 鉄価格の高騰
  • 樹脂系材料の高騰
  • 輸送費の上昇
  • 人件費の上昇

など、複数の要因が同時に押し寄せています。

つまり、「一つの材料だけ高い」という話ではありません。

家づくり全体のコスト構造そのものが変化しているのです。

見えない部分ほど価格が上がっている

一般のお客様から見ると、「住宅価格が高くなった」
という認識はあっても、実際にどこが高くなっているのかは見えにくい部分もあります。

しかし現場レベルでは、非常に細かな部分まで価格上昇が起きています。

例えば、

  • 断熱材
  • 接着剤
  • シーリング材
  • 防水材
  • 配線保護材
  • 樹脂サッシ
  • 梱包資材

など、“主役ではない部材”の価格上昇が積み重なっています。
こうした副資材は、一つひとつの単価だけを見ると大きく感じないかもしれません。

しかし住宅一棟分で考えると、積み重なった影響は非常に大きくなります。
住宅会社様が「利益が厳しい」と言われる背景には、こうした細かなコスト増加も大きく関係しています。

「価格を上げたいわけではない」

住宅会社の方々と話していて感じるのは、多くの企業が「利益を増やしたいから値上げしたい」
のではない、ということです。

本音としては、

「できれば価格は維持したい」
「お客様の負担を増やしたくない」

そう考えている企業がほとんどだと思います。

しかし、仕入れ価格が大きく変化する中で、価格維持だけを優先すると、
今度は品質低下や企業体力の低下につながってしまいます。

結果として、

  • 使用材料を変える
  • 工程を簡略化する
  • 人件費を削る
  • メンテナンス性を下げる

といった判断を迫られるケースも出てきます。

これは非常に難しい問題です。価格を守ることと、品質を守ること。
両方を成立させる難易度が、今まで以上に高くなっている時代だと感じます。

福田鉄工として感じること

私たち福田鉄工も、鉄を扱うものづくり企業として、原材料価格の変動とは常に向き合っています。

鉄価格も決して安定しているわけではなく、世界情勢やエネルギーコストの影響を大きく受けます。

さらに加工に必要な電気代、燃料費、輸送費も上昇しています。

つまり、製造業全体が同じような課題を抱えていると言えます。

そんな中で私たちが大切にしたいと思っているのは、「安さだけを追わない」という考え方です。

もちろんコスト意識は重要です。

しかし、それだけで判断してしまうと、長期的に見た時に価値が残らないケースもあります。

例えば、

  • 長く使えるか
  • 修理しやすいか
  • メンテナンスできるか
  • 愛着を持てるか
  • 将来も価値が残るか

こうした視点は、これからさらに重要になると感じています。

“安い時代”が終わり始めている

日本は長い間、「安くて良いもの」を求める文化が強かったと思います。

もちろんそれ自体は素晴らしいことです。

しかし近年は、世界全体で見ると、

  • エネルギー価格
  • 人件費
  • 原材料費
  • 輸送コスト

などが上昇し続けています。

つまり、「とにかく安く」という考え方だけでは、ものづくりが成立しにくい時代になってきています。

特に地域企業の場合、大量生産による価格競争では大企業に勝てないケースも多くあります。

だからこそ、

  • 技術
  • 提案力
  • デザイン
  • 地域性
  • メンテナンス対応
  • 顔が見える関係性

など、“価格以外の価値”が重要になっていくのではないでしょうか。

住宅は「買うもの」から「育てるもの」へ

最近、住宅業界でも少しずつ価値観が変わってきているように感じます。

以前は、

「新築が一番」
「最新設備が正解」

という考え方が強かった印象があります。

しかし今は、

  • 長く住む
  • 手入れしながら使う
  • 愛着を持つ
  • 修繕しながら育てる

という考え方も増えてきています。

これは非常に良い変化だと思います。

価格だけでなく、“時間と共に価値が増す”という視点。

これは住宅だけでなく、家具や鉄製品、地域の建物、街並みにも共通する考え方だと思います。

地域のものづくり企業に求められること

今後、地域のものづくり企業には、単なる「製造」だけではない役割が求められていくと思います。

例えば、

  • 地域の課題を解決する
  • 建築会社と一緒に価値をつくる
  • デザインや空間づくりに関わる
  • 修繕やリノベーションに対応する
  • 地域文化を残す

など、より広い役割です。

実際、住宅価格が上がる時代だからこそ、「本当に必要なもの」を選ぶ傾向は強くなると思います。

そうなった時、ただ安いだけでは選ばれません。

「この会社にお願いしたい」
「この人たちとつくりたい」

そう思っていただける存在になることが重要なのではないでしょうか。

ナフサショックという言葉だけ聞くと、どこか遠い世界の話のように感じるかもしれません。
しかし実際には、住宅価格、暮らし、地域経済、ものづくり、すべてにつながっています。
だからこそ今、私たち企業側にも、「どんな価値を残していくのか」
が問われている時代なのだと思います。

価格高騰は確かに厳しい問題です。ですが一方で、“本当に良いものとは
何か”を見直すきっかけにもなっているように感じます。

福田鉄工としても、地域のものづくり企業として、単なる製造ではなく、「長く価値が残るものづくり」をこれからも追求していきたいと思います。

そして住宅会社様や地域企業の皆様と一緒に、価格だけではない“これからの価値”をつくっていければと思っています。