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2025/10/07
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地域のやさしさを形に──Kitchen105の「こども食堂」と、福田鉄工が感じた“地域の力”
小さなリボンがつなぐ、大きなぬくもり
柏崎の田んぼを見渡すカフェ「Kitchen105」。
店内に入ると、やわらかな木の香りと、おいしそうなランチの匂いに包まれる。
メニューをめくると、そこに目を引く一行がありました。
「キッズオムライス 0円」
驚きました。
子どもが無料でオムライスを食べられる。
しかもそれは、地域の大人たちの支援によって成り立っているというのです。
厨房では、温かい手が卵を包み、
フワッと広がる香りが、まるで“安心”を形にしているようでした。
「食べること」を通して、地域がひとつになる
Kitchen105では、地域の協力を受けて「こども食堂」を続けています。
小学生以下の子どもたちは、店の入り口にあるカラフルなリボンを1つ取って、
それを“チケット”として食事を受け取ることができます。
そのリボン1本1本は、地域の大人が「一口300円」で寄付したもの。
つまり、誰かの優しさが次の誰かの「いただきます」につながる仕組みです。
寄付というより“分かち合い”。
お金ではなく「想い」が動かすこども食堂。
それが、Kitchen105のスタイルです。


福田鉄工が感じた、“支援”ではなく“循環”
私たち福田鉄工は、地域に根ざしてものづくりを続けてきました。
鉄を叩き、形を作り、設備を支える。
その仕事の本質は、いつも「人の役に立つこと」にあります。
だからこそ、このKitchen105の取り組みを見たとき、
単なる“社会貢献活動”ではなく、
地域の中にある「支え合いの仕組み」として、とても共感しました。
鉄を溶かして形をつくるように、
この活動も“人の想い”を形にしていました。
リボンという小さなパーツが、まるでボルトのように地域をつなぎ、
誰かの行動を、次の誰かの希望へと固定している。
ものづくり企業として、この“構造の美しさ”に心を打たれました。
「一口300円」──やさしさを見える形に
お店の一角に立つ黒いボードには、
カラフルな蝶ネクタイ型のリボンがずらりと並んでいます。
その上に書かれた言葉が、すべてを語っていました。
「一口300円から」
大人が300円を寄付することで、1つのリボンが貼られ、
そのリボンが、次に来る子どもの“1食”になります。
リボンが増えるたびに、子どもたちが笑顔になり、
そしてお店全体が、まるで“地域の食卓”のように温かくなっていく。
福田鉄工も、同じように感じています。
工場で作るのは鉄製品ですが、
地域に残したいのは「安心して暮らせる場」。
その意味で、Kitchen105の活動は、
“鉄ではなく想いをつなぐものづくり”だと感じました。
豊かに見えても、誰かが困っている現実
看板には、こんな言葉がありました。
「豊かに見える日本で、7人に1人の子どもが貧困状態にある」
この数字に、改めてハッとさせられます。
私たちの工場も地域にあり、毎日、学校帰りの子どもたちが前を通ります。
元気な笑顔の裏で、家に帰っても食卓が静かな家庭があるかもしれない。
そんなことを考えると、
「ものづくりだけではなく、人づくり・まちづくりも支えたい」と思わずにはいられません。
こども食堂は、単なる“支援”ではなく、
“地域の安心インフラ”です。
誰かが気軽に立ち寄り、
「今日もがんばったね」と声をかけてもらえる。
そんな場所が増えれば、
地域の未来は確実に強く、あたたかくなります。
「食べること」は、生きる力を育てること
オムライスを前にした子どもたちの表情は、本当に輝いています。
スプーンを手に「おいしい!」と笑う姿。
その瞬間、言葉にできないエネルギーがあふれている。
食べることは、生きること。
そして、“誰かに作ってもらったごはんを食べる”という体験は、
「自分は大切にされている」という感覚を育てます。
福田鉄工でも、社員が集まって食事をする時間を大切にしています。
お弁当を囲んだり、差し入れを分け合ったり。
そこに生まれるのは“仲間意識”であり、“安心感”です。
この感覚は、工場のチームワークの根っこでもあります。
だからこそ、Kitchen105の“こども食堂”が作る時間には、
ものづくりと同じ「人を育てる力」があると感じました。
地域企業としてできること
福田鉄工は、製缶・溶接といった現場仕事を通じて、
地域のインフラや産業を支えています。
でも、それだけで本当の地域貢献とは言えません。
地域の「仕事」と「暮らし」はつながっています。
だから、こうした“食”の取り組みも、私たちにとって他人事ではない。
社員の家族、地域の子どもたち、そして未来の担い手たち——
そのみんなが安心して生きられる環境があってこそ、
鉄工の現場も、まちも、力を発揮できます。
Kitchen105が示す「地域の助け合いの形」は、
まさに、これからの時代に求められる企業と地域の関係だと感じます。
“寄付する企業”ではなく、“共に生きる企業”へ。
私たちも、その一員でありたいと思います。
「優しさを形にする」ものづくり
リボンを1つ貼る——
それはほんの小さな行動ですが、確かに誰かを支えています。
福田鉄工の仕事も、実は同じです。
ひとつひとつの溶接、ひとつひとつの鉄骨が、
人の安全や安心を支える構造になっている。
見えない部分を、確かな力で支える。
この「Kitchen105のリボン」もまた、
社会を支える“見えない鉄骨”のように感じました。
「支援」ではなく「共生」のまちへ
この活動の素晴らしい点は、
“支援される側”と“支援する側”の境界がないことです。
子どもたちは「お金がないから助けてもらう」のではなく、
「まちの優しさに包まれて食べる」。
大人たちは「かわいそうだから寄付する」のではなく、
「一緒に育てていく」という感覚で関わっている。
それは、私たち企業にとっても大切な姿勢です。
ものづくりの現場では、技術を教えるだけでなく、
若い社員が安心して働ける環境を作ることも大事。
つまり、“共に育つ”という考え方です。
Kitchen105の「こども食堂」は、
地域社会全体が“共に育つ”ための仕組みそのもの。
それを地域で見られることが、何よりの誇りです。
おわりに──やさしさの鉄骨を組み上げるように
福田鉄工は、鉄を扱う会社です。
けれど、私たちが作りたいのは“鉄だけの世界”ではありません。
人と人が支え合う、強くて優しい地域の未来です。
Kitchen105のリボンたちは、
まるで“やさしさの鉄骨”のように、まちの中に立っています。
一本一本が、見えない誰かのために立ち、
まちの構造を少しずつ変えていく。
私たちも、その一部として、
できることを少しずつ積み重ねていきたい。
リボンを1つ結ぶように、
溶接を1つ丁寧に仕上げるように。
この地域に「安心して生きられる構造」を
共に作っていけたら——それが、私たち福田鉄工の願いです。